DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―
文徳と亜美が楽器の準備をするうちに、ドラマーの牛富《うしとみ》とキーボーディストの雄《ゆう》がやって来た。
おれは短い挨拶を交わす。
牛富は同学年で、レベル別の数学で同じ教室だったことがある。
体がデカくてゴツいけど、すっげー優しくて癒し系なやつ。
雄は一つ下。
文徳たちのストリートライヴで、女の子だと思ってナンパしたら男だったんで笑ったけど、一年でだいぶ男っぽくなった。
文徳たちの5ピースバンドの名前は「瑪都流《バァトル》」っていう。
バァトルというのは古い言葉で「勇者」って意味で、中二病感あふれる漢字表記は当て字だそうだ。
五人がそろわないと、一つのものが形にならない。
それってどういう感覚なんだろう?
おれは音楽もスポーツもまじめにやったことないし、部活も委員会も入ったことない。
憧れみたいなのはないつもりなんだけど。
まあ、実際にバンドの様子を見物してたら、ちょっとうらやましくなってきちゃうもんだね。