DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―
煥は眉間にしわを寄せて、文徳に向き直った。
無言のうちに「こいつ、誰?」と、おれのことを尋ねる。
文徳は肩をすくめて、おれに視線を寄越した。
おれも肩をすくめた。
口を開かず、音を使わない声で、煥ひとりに向けて言った。
【申し遅れたけど、おれは長江理仁。文徳から、チラッとくらい聞いてない? あっきーと同じで、四獣珠の預かり手だよ。
朱雀の宝珠、朱獣珠を預かってる。きみはさ、白虎《びゃっこ》でしょ?】
煥の目の色が変わった。
「このところ白獣珠が落ち着かなかった理由、こういうことか」
すげーいい声だ。
一瞬、話題がおれの頭から吹っ飛んだ。
声変りをして低くなっているのに、しなやかで澄んだ声。ハッとするほど印象的。