DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―
おれはこっそり大きな深呼吸をして、姉貴と海牙のところへ行った。
【やーっと挨拶できたね、玄武の阿里海牙くん。おれは朱雀の長江理仁《りひと》。こないだは姉貴のこと守ってくれて、ありがと】
音のない声で言った。
チカラの片鱗さえない人にはまったく聞こえない波長を選んだ。
いくつかの真剣なまなざしがおれに集まった。
おれは、今の声を聞いたはずの全員をぐるっと見渡す。人波越しに視線が絡み合う。
煥、文徳、鈴蘭、さよ子、姉貴、そして海牙。
海牙は仮面みたいな笑顔を崩さなかった。
「四つがそろったんですね。何かが起ころうとしている。いや、もう起こってしまっているんでしょうか。四獣珠が発する声のようなものを感じるんですよね」
【みんな同じなんだ? じゃあ、四獣珠が繰り返してるこのメッセージは、記憶に引っ掛かってるはずだね。「因果の天秤に、均衡を」って】