DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―
「広いね」
おれのシンプルな感想に、海牙はうなずいた。洋館風を指差す。
「住み込みの人たちの宿舎です。ぼくもあの一室に居候してます」
「なるほど。それで、同じ部屋が並んでそうなデザインなんだ」
鬼瓦のデザインが変わってるなーと思ったら、知ってる会社のロゴだった。
意匠化されたアルファベットによる「KHAN」。
姉貴もそれに気付いたらしい。
「KHANって、あの医療機器メーカーよね?」
「はい。総統は確か会長だったと思います。奥さんが社長で、実務を切り盛りされているという話です」
「なるほど。信じられないくらいの大豪邸にも納得だわ。県の経済を引っ張る大企業だものね」