DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―


大広間だ。窓はない。


明かりはともっているけれども、飾り彫りが施された天井が高いせいか、何となく薄暗い。



それにしても、広すぎだろ。何十畳あるんだ?


中学の修学旅行で連れていかれた築四百年の城の、将軍の謁見の間がこんな感じだった。


あの部屋は奥に行くにつれて段々で高くなる造りで、将軍の座るところから臣下一同を見晴らす構造だった。


この部屋は、ただ平らに広い。



煥がポツンと言った。



「道場みてぇだ」



確かに、と文徳が同意した。



「空気が張り詰めてるしな。くれぐれも無礼がないようにって、自然と思わされる感じだ」



大広間のやや奥まった位置に、座禅を組んだ和服の男の姿がある。


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