DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―


総統だ。


昨日、車に乗っている姿をチラッと見た。


あのパラレルワールドな戦いの夢の中でも、何度も見ている。


姿かたちだけなら、中肉中背。


でも、そこに存在する気配の重みは、肉体の体積をはるかに超えている。



天沢氏が先に立って大広間に入って、総統のほうへと進んでいった。


進み方が異常だった。天沢氏は飛んでいった。


背中に漆黒の広い翼があって、ばさり、ばさりと羽ばたいていった。



「総統、四獣珠の者たちが到着しました」



そう告げた天沢氏は総統のかたわらに降り立って、行儀よく翼をたたみながら正座をした。


総統が、閉ざしていたまぶたを開けた。



「急に呼び立ててしまって、すまないね。部屋に入りなさい。話をさせてくれ。私にはきみたちの助けが必要だ」


< 265 / 405 >

この作品をシェア

pagetop