DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―
総統だ。
昨日、車に乗っている姿をチラッと見た。
あのパラレルワールドな戦いの夢の中でも、何度も見ている。
姿かたちだけなら、中肉中背。
でも、そこに存在する気配の重みは、肉体の体積をはるかに超えている。
天沢氏が先に立って大広間に入って、総統のほうへと進んでいった。
進み方が異常だった。天沢氏は飛んでいった。
背中に漆黒の広い翼があって、ばさり、ばさりと羽ばたいていった。
「総統、四獣珠の者たちが到着しました」
そう告げた天沢氏は総統のかたわらに降り立って、行儀よく翼をたたみながら正座をした。
総統が、閉ざしていたまぶたを開けた。
「急に呼び立ててしまって、すまないね。部屋に入りなさい。話をさせてくれ。私にはきみたちの助けが必要だ」