DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―


大広間に満ちる、空気っていうか気配っていうか雰囲気っていうか、とにかく「気」みたいなものは、ひどく静かだ。


空虚だから静かなんじゃなくて、身動きが取れないくらいみっちり詰まってるせいで音が立たないっていう、そんな静けさ。



途方もなくドデカいチカラが、用心深く息をひそめている。


本能的に、その巨大さには身がすくんでしまう。



煥が最初に畳に足を踏み出した。


それから、海牙と文徳が同時に。


姉貴が続いて、おれと鈴蘭が最後だった。



でも、真っ先に声を上げたのは鈴蘭だ。



「さよ子がいなくなったって聞きました。それも、だまされて連れ去られたみたいだって。でも、脅迫状が届いたわけでもないんでしょう? どういう状況なんですか?」



平井は静かな声で答えた。



「どう説明すればいいだろうか。私にはわかる、としか言いようがない。私はね、人間の肉体を持ちながら、全知全能の存在でもあるのだ」


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