DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―
おれは、口の中が干上がっていくように感じた。
あんなにたくさんの宝珠があったら、一体、どのくらい大きな願いが叶ってしまうんだろう?
その代償として要求される命の数は、どれほどになるんだろう?
総統がこっちを向かないまま、かぶりを振った。
【代償が命である必要はないのだよ、理仁くん。もしも願いが些細なものであるなら、
例えば、互いに想い合っているのに正直に話すことができない二人の背中を押す程度なら、髪を切らねばならなかったりスマホが壊れたり、そんなものだ】
「だけど、それでも、宝珠は奪っていく……
『そんなもの』って言い切れるかどうか、傍目《はため》にはそう見えたとしても、おれは『そんなもの』って感じないかもしれなくて……」