DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―
否が応でも脳裏に浮かんでしまうのは、母親の姿。
命までは奪われなくてよかったね、なんだろうか?
抜け殻みたいな状態で生きてる、やせてちっちゃくなっちゃった人。
どんなに呼び掛けても応えてもらえないむなしさって、これでもラッキーだったってことになるのか?
総統は、おれの心の声なんて全部聞こえてるんだろうに、それについては何も触れずに、こっちを向いて口を開いた。
「チカラが強いというのは、不自由なことだ。私には禁忌がきわめて多い。なぜなら、私が人間だからだ。
判断を誤ることがある。イライラしたり悲しくなったりもする。取り乱してしまうこともある。そんなとき、私はチカラを持て余す」