DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―
鈴蘭が言った。
「さっきも、そうでしたよね?」
「面目ないね。皆に怖い思いをさせてしまった」
「いいえ、仕方ないです。子どもが誘拐されて脅迫の電話がかかってきたら、落ち着いていられる親なんて、きっといません。あの、さよ子のおかあさんは?」
「妻は、オフィスのそばのマンションにいる。あそこがいちばん警備しやすい」
「安全なところにいらっしゃるなら、よかったです」
総統はうなずいて、おれの目を見た。
いや、全員の目を同時に見つめてるんじゃないかと感じた。
「私は、この地球上で最も大きな宝珠を預かっている。預かるべき宝珠の巨大さに応じて、私に授けられたチカラもまた巨大だ。
私がこうして小さな宝珠を数多く身に付けるのは、四六時中ずっとチカラを抑え込む必要があるから」