DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―


先行するのは文徳《ふみのり》のバイクだ。


文徳の後ろにタンデムしたおれが、バイクの爆音に飲まれることのない思念の声を飛ばして、行き先を指示する。



【この区画までが来客用の駐車場。で、突き当たりを左に折れたら教職員用の駐車場で、いちばん奥にVIP用のがある。

親父はいつもVIPんとこに車を停めてて、そのそばに、VIP専用で無駄に上等なエレベータホールがあるんだ】



親父はそこにいる。


どうしてそう思うかって、ただの勘。そんな夢を何度も見たから。



なんてことを出発する前に言ったら、海牙がすっげー微妙な顔をした。


そりゃ、非科学的に過ぎるって、おれ自身も思うゎ。



でも、科学志向の海牙も、口に出しては何の反論もしなかった。


総統が黙っていたからだろう。


おれが間違ってたら、全知のチカラを持つおっちゃんは、きっと何か別の道を示すヒントを出したはずだ。


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