DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―
「あいつ、あの件のこと思い出してた?」
「いや、覚えてないみたいだった」
さよ子の誘拐の一件は、なかったことにされた。
さよ子がそれを強く望んだからだ。
ショックが大きかったせいか、さよ子は一週間くらい寝込んだ。
そんなこんなで、そっとして忘れてしまおうってことに落ち着いた。
親父のサイドもまったく動きがなかった。
警戒して様子を探ってはいたんだけど、ちょっと異様な結論を出すに至った。
どうやら、親父の頭からは、あの一件が完璧に抹消されているらしい。
おれは笑ってみせた。
「何にせよ、あのクソ親父も、教育者失格ってか人間失格レベルのクズだって自覚はあるわけか」
「そういう言い方は痛々しいからやめろって」
「事実じゃん」