DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―
「長江さん、前に見たときよりやつれてたよ。
四月に、奥さんに快復のきざしが見え始めたのは理仁とリアさんが帰ってきたからだろうって思ったとき、急に自分の身勝手さを痛感したんだって」
「は?」
「奥さんにも、理仁やリアさんにも、家に帰ってきてほしいけど、それを望むのはどうしようもない身勝手だって言ってた。涙交じりで」
「今さらかよ。遅いって。完全に手遅れ。あいつが朱獣珠を使いまくるせいで、おれらがどんだけ迷惑してきたか」
文徳と海牙が顔を見合わせた。
微妙で慎重な表情をしている。
文徳が言葉を選ぶ様子でおれに告げた。
「そのことだけどさ、長江さんは宝珠のことをまったく覚えてないぞ。というか、まったく知らないって言うほうが正しいかな」