DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―


「宝珠を知らない?」


「ああ。誘拐の一件と同じだ。本当に、まったく記憶がない」


「じゃあ、飼ってた動物のことは? あいつが全部、手を下したんだぞ。自分の都合のためにさ。

それだけじゃない。おかあさんのことも……おかあさんが何で倒れたか、あいつ、覚えてなかったってのか?」



思わず声が高くなってしまった。


テーブル越しの海牙が立ち上がっておれの肩を押さえて、それで、おれは言葉を呑み込んだ。



文徳は周囲をはばかる声音でささやいた。



「長江さんは人払いをした後、俺たちに、自分が振るった家庭内暴力のことを告白したよ。

ペットの命を奪ったことは暴力衝動のはけ口だったっていうふうに、記憶が書き換えられてるみたいだった」


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