DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―
プレートのケーキが半分ほどなくなったころだった。
さよ子は、唇の端にラズベリーのムースをくっつけたまま、怒っているような顔をした。
「理仁《りひと》先輩、朱獣珠をここに出してください。言いたいことあるんで」
「朱獣珠? 何で?」
「いいから!」
「こいつ、寝てるよ?」
「それでもいいから出してください。じゃなきゃ、わたしの気が収まらないの!」
「へい」
おれは、グレーのシャツの襟元から朱獣珠のペンダントを引っ張り出して、首から外してテーブルの上に置いた。
ちなみに、シャツの上に羽織ったニットは見事に、ボルドーの柔らかい色味も格子模様のデザインも、さよ子のワンピと被っている。