DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―
さよ子の目に涙が浮かんでいる。
何かをめちゃくちゃに壊したい衝動の代わりみたいに、さよ子はレモンパイにフォークを突き立てて、勢いよく口に運ぶ。
おれは入試直前のバタバタで、具体的に何があったのか、よく知らない。
文徳情報によると、鈴蘭の何度目かのアタックに煥がついにOKを出したらしい、ってこと。
「煥先輩、風邪ひいてたんですよ。十日ぐらい前。
それで、文徳先輩にうつしちゃうんじゃないかって心配して、体調が悪いのに家に帰らずにいたのを、鈴蘭が気付いてお世話してあげたんだって。
わたしも風邪気味で外出やめてたから、全然知らなかった」