DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―
そして、動かなかったのは煥だけじゃなかった。
煥のいちばん近くまで寄っていってた女の子が二人。
小柄なほうは、おれと同じように帽子を深くかぶっている。
背丈の割に胸の発育がいい。
長い黒髪、色白、青い目、驚いた表情、帽子のつばの下にチラつく青い胞珠。
【もしかして、お仲間?】
音を伴わない声に指向性を持たせて、帽子の女の子だけにぶつける。
おれの唇は動いてないけど、それが確かにおれの声だってことは、彼女にもわかったらしい。
青い目に浮かぶ警戒の色。もしくは、敵対の色。
でも、そんな色を満面に出して不用意なことを言うほど、彼女は無防備でも愚かでもなかった。
ニッコリと、彼女は微笑んだ。
「不思議ですね。チカラある血を持つ者同士が引き合うなんてこと、百年に一度あるかないかって聞いてたんですけど」
【集まっちゃってるよね~、不思議なことに。妙なことが起こんなきゃいいけど?】
彼女は肉声、おれはテレパシー。
アンバランスな会話を、おれはここで止めた。