傷だらけの君は
どの店に目を向けてみても、甘い匂いが鼻腔を刺激しても、興味は湧かない。
「美味しそうな団子だな......ああ、あれも。お前に似合いそうな簪だ」
それは父様も同じなようで。
言葉では楽しんでいるように見えるけれど、町ゆく足は緩めることはしない。
どこか上辺だけの繕い言葉にあたしは足を止めた。
そこはちょうど橋の上で、あたし達以外に人はいない。
「どうした紅」
「それはあたしの台詞です。どうしてですか、なぜ、......なにをしにきたんですか」
父様にこんな強気な態度をとるのは初めてだった。
目の前にたたずむ父様は威厳が溢れていてあたしは昔から怖かった。
手が、足が、何かある度に飛んできて傷だらけの身体にまた傷をつくる。
それでもあたしは......
あなたのことを、信じてたのに。
厳しくされるのは、父様なりの教育なんだって、あたしを立派に育ててくれてるんだって。
そう思ってた。
父様がこちらへ一歩、踏み出してきて。
殴られる、本能でそう感じて目を閉じたあたしに覆いかぶさったのは父様の温もりだった。