傷だらけの君は


「......すまなかった紅。辛い思いをさせて」


「っ......!」


強く抱き締められて、懐かしい匂いに包まれて、頭の中が混乱する。


行き場をなくしたあたしの手は、指先が震えているのに気付いた。



「ずっとお前のことが心配だったんだ。なかなか戻ってこないから、何かあったのかと気が気じゃなかった。

あいつらに......人斬り集団に、酷いことはされていないか?」


「......父様」


あたしがそう呼ぶと、父様は嬉しそうな声をあげた。



「そうだ、俺は紅の父親だ。あの時は嘘をついて悪かった」



『俺とお前は、血など繋がっていない』


そう言ったときの父様の声色は、本気だった。


あの時の言葉は今でも頭の中にこびりついて離れない。



それなのに父様はいま、あたしにこうやって笑いかけている。


今までに見たこともないような、満面の笑みで。



「なあ、紅......また一緒に暮らさないか?」



悔しかった。



嘘をついている父様にも、


......嘘だと分かっていて、 "父様" を受け入れようとしている自分にも。



悔しくて悔しくて、

堪えきれずに涙が一つ、地面に落ちた。


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