傷だらけの君は
それでも父様はあたしの腕を強く掴んで、無理やり引っぱっていこうとする。
「やめて!離して!絶対に行かないからっ!あたしもう仕事もしない!!」
「この......クソガキッ!」
「っ!」
殴られるっ......
振り上げられた父様の手をじっと睨みつける。
本当は怖くて怖くて仕方がないのに、あたしは目をつぶろうとは思わなかった。
どれだけ怖くても絶対に、この目だけは逸らしてはいけない。
叩きたければ叩けばいい。気の済むまで殴ればいい。
だけど、何があってもあたしはここから動かない。
「見て紅、今日は満月だよ」
「え......」
振り下ろされる寸前、あたしと父様の間に割って入ってきたのは沖田さんだった。
背中を殴られたはずなのにそんな気配はおくびにも出さず、空を見上げていた。
視線を追って見上げた先には、白い満月が浮かんでいて。
「......まだ、お昼ですよ」
「うん。じゃあ夜になったらもっと綺麗になるね」
......はじめて会った時の顔とは全然違うなあ。
あの時の沖田さんはあたしなんかに興味の欠片もなくて、早く帰りたそうで。
きっと思いもよらなかったよね、あの頃のあたしも沖田さんも。
こんなに優しい顔で、あたしを何度でも迎え入れてくれる。
「団子でも用意して夜、みんなでお月見しようか」