冷徹皇太子の溺愛からは逃げられない
 すると、ルイーズの肩がビクッと揺れ、穏やかさを保ったままその表情が固まる。

「あ、ごめんなさい、私さっきから余計なこと聞きすぎよね……」

 フィラーナが遠慮がちに視線を送ると、ルイーズはハッとしたように微笑みを取り戻した。

「……いいえ、フィラーナの感じたことは最もよ。謝るのは私の方だわ。ズルいのは私。自分のためにもフィラーナが王太子妃に選ばれてほしい、って思ってしまったもの」

「それって……もしかしてルイーズも乗り気がしないまま、王宮に呼ばれたの?」

「え……ルイーズも、っていうことはフィラーナも……?」

 互いに目を丸くして無言のまま見つめ合っていたが、そのうち互いに可笑しくなり、プッと吹き出してしてしまった。

「ルイーズもそうだっだのね。ちょっとビックリしたけど、同じように考えている人がいて気が抜けちゃった。あなたには白状するわ。ズルいのは私も同じよ。誰かが早く王太子妃に選ばれたらいいのに、そうしたら私は帰郷できるから、って思ってたわ」

「誰か待っている人がいるの? ……例えば、好きな殿方とか……」

 やや深刻そうに眉根を寄せるルイーズに、フィラーナは横に首を振りながらあっけらかんとした笑顔を向ける。

「そうじゃないの。でも大切な人なら……兄がいるわ。私、できれば一生兄のそばで力になりたい、って思ってるの。でもそれは無理だから、せめて領地の近い貴族の元に嫁げたらいいな、って」

「そうなの……。フィラーナはお兄様思いなのね」

「……お兄様のことは大好きよ。でも……」

 そうすることで罪の意識から逃れようとしているーー

 フィラーナは無意識のうちに暗い思考の渦に飲み込まれそうになり、うつむきかけたところで顔を上げた。心配そうに見つめるルイーズに「何でもないわ」と慌てて笑顔を作る。

「ルイーズはどうなの? 誰にも言わないから、良かったら話してくれない? 誰か想いを寄せている方がいるの?」

 すると、ルイーズの頬が一瞬で赤みを帯びた。
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