冷徹皇太子の溺愛からは逃げられない
 その可愛らしい反応に、フィラーナも頬を緩ませ、「え、どなたなの?」とついつい身を乗り出す。優しくて清らかなルイーズの想い人ならば、きっと誠実で心温かい人なのだろう。

「昔からの知り合い? どこかの貴族のご子息?」

「いいえ、お会いしたのは一年前ほどよ。でも、私のことなんか気にも留めていらっしゃらないと思うわ。だって……私のような下級貴族にとっては上流どころか、雲の上のような存在だもの……」

(雲の上?)

 フィラーナは首を傾げる。上流階級より上には、王族しかいない。

(王太子殿下は除外されるから……まさか……⁉)

 ハッと一瞬で顔を強張らせ、フィラーナは勢いよく立ち上がった。

「ダメよ、ルイーズ! いくら王族だからって心を奪われちゃいけないわ!」

「ど、どうしたの……?」

 驚きで何度も瞬きを繰り返すルイーズの返事を待たずに、フィラーナは導き出した結論を口に出す。

「だって、テレンス王子でしょう⁉」

「ええっ⁉」

 ルイーズも慌ててソファから腰を浮かせた。

「確かに、顔も良くて背も高くて、優しい雰囲気だけど、女は自分の思い通りになるって信じてる女好きよ? ああ、このままじゃルイーズがあの人の毒牙にかかってしまうわ!」

「ちょっと、違うわよ、テレンス王子じゃないわ」

「そうなる前に私がルイーズを守らなきゃ……って……え、違うの……?」

 だとしたら、該当するのはあとひとりーー

「もしかして、セオドール殿下……?」

 小声での問いかけに、ルイーズは恥ずかしそうにコクリと頷く。

「ええーっ⁉」

 フィラーナは驚愕のあまり叫び声を上げたが、すぐに口を手で覆った。そのまま身体ごと固まって動けなくなっていたが、少し困惑したような微笑みを浮かべたルイーズに着席を促される。
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