冷徹皇太子の溺愛からは逃げられない
「恋だって、気づいたのね……?」

「ええ」

 胸の前で両手を握りしめたルイーズが、深く頷く。恋を告白したルイーズの顔は明るく輝いて見えて、フィラーナは口元をほころばせた。

「わかるわ、私も胸が苦しくーー」

言いかけたところで、頭の中にウォルフレッドの顔が浮かんだことに気づき、パタッと言葉を切る。

(わかるわ、って何……? 私、何を言おうとしたの……?)

考えるのを中断しようと、フィラーナは首を左右に振った。今はルイーズの話に集中しなきゃ、と頬を軽く叩き、気持ちを入れ替える。

「セオドール殿下なら、私もここに来て偶然お会いしたことがあるわ。とても優しくて素敵な方ね。あ、でも私はセオドール殿下にそれ以上の気持ちは持ってないから安心して。何かあったらいつでも相談に乗るから」

「ありがとう」

穏やかに微笑むルイーズの横に並んで座るセオドールの姿を、フィラーナは想像してみた。あと五年も経てば、セオドールも見目麗しい立派な若者に成長するだろう。その時、ルイーズは二十二歳になっていて、気品あふれる淑女としての輝きは一層増しているはずだ。そんなふたりが手を取り合っていても、何の違和感も生じない。

「フィラーナはどこで殿下に会ったの?」

「ああ、それはね、この離宮とお城を繋ぐ森があって、殿下は時々鳥を写生しに足を運ばれているみたいなの。それがいつとはわからないけだ、今度一緒に行ってみましょう。足元が少し汚れるかもしれないけど」

「それは大丈夫。高価な服や靴は持ち合わせていないから。ありがとう、きっとよ。私、フィラーナの恋も応援してるから」

「え、私、恋なんてしてないけど……」

「何言ってるの。さっき、『わかるわ』って言ってたでしょ? 私が聞き逃すと思って? そのうちでいいから、どなたなのか教えてね」

ルイーズがいたずらっぽく微笑む。詳しく聞いてこないあたり、何か勘づいているのではないだろうか。

「そ……そんなこと言ったかしら?」

フィラーナはそう誤魔化すのがやっとで、さりげなく視線を宙にさまよわせたが、結局返す言葉は見つからなかった。
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