冷徹皇太子の溺愛からは逃げられない
*
夕刻になり、ルイーズが帰ったあと、フィラーナは窓際の椅子に座り、橙色に染まりかけた薄い雲をボーッと眺めていた。
年頃の若い娘らしく、友人の恋の話を具体的に聞いたのは初めてのことだ。それによって、自分の中に芽生える始めている“想い”に、無意識に反応してしまうなんてーー
(私、恋なんて自分には縁遠いと思ってたけど……)
ふう、と小さく息をつく。
ウォルフレッドとはあれから会っていない。聞くところによると、今、地方を視察中で城にはまだ戻っていないのだという。そのため、ウォルフレッドからまだ直接帰郷命令を言い渡されてはいない。レドリーの働きかけもあってのことだろう。
(護衛も殿下の優しさだって、今ならわかるのに、何であんな言い方しちゃったのかしら……)
次に会う時は、謝罪か礼か、どちらを先に言うべきか。でも、向こうは怒って相手にしてもらえないかもしれないと思うと、どうしていいのかわからなくなる。
そろそろ風が出てきたので閉めようと、窓に手を伸ばしかけた時、メリッサが慌ただしく入室してきた。
「あ、メリッサ。もう夕食の時間なのね」
「フィラーナ様、今、耳にしたのですが」
メリッサは質問に答えず、足早に近づいてきた。その深刻そうな表情に、フィラーナの胸中に不安が募っていく。
「殿下のご一行が、視察の道中で何者かの襲撃を受けられたそうです。殿下も落馬で怪我をされたとの知らせがーー」
突如、言葉途中でメリッサの視界から、フィラーナが消えた。振り返ると、すでに扉に向かって駆け出しているフィラーナの後ろ姿が見える。
夕刻になり、ルイーズが帰ったあと、フィラーナは窓際の椅子に座り、橙色に染まりかけた薄い雲をボーッと眺めていた。
年頃の若い娘らしく、友人の恋の話を具体的に聞いたのは初めてのことだ。それによって、自分の中に芽生える始めている“想い”に、無意識に反応してしまうなんてーー
(私、恋なんて自分には縁遠いと思ってたけど……)
ふう、と小さく息をつく。
ウォルフレッドとはあれから会っていない。聞くところによると、今、地方を視察中で城にはまだ戻っていないのだという。そのため、ウォルフレッドからまだ直接帰郷命令を言い渡されてはいない。レドリーの働きかけもあってのことだろう。
(護衛も殿下の優しさだって、今ならわかるのに、何であんな言い方しちゃったのかしら……)
次に会う時は、謝罪か礼か、どちらを先に言うべきか。でも、向こうは怒って相手にしてもらえないかもしれないと思うと、どうしていいのかわからなくなる。
そろそろ風が出てきたので閉めようと、窓に手を伸ばしかけた時、メリッサが慌ただしく入室してきた。
「あ、メリッサ。もう夕食の時間なのね」
「フィラーナ様、今、耳にしたのですが」
メリッサは質問に答えず、足早に近づいてきた。その深刻そうな表情に、フィラーナの胸中に不安が募っていく。
「殿下のご一行が、視察の道中で何者かの襲撃を受けられたそうです。殿下も落馬で怪我をされたとの知らせがーー」
突如、言葉途中でメリッサの視界から、フィラーナが消えた。振り返ると、すでに扉に向かって駆け出しているフィラーナの後ろ姿が見える。