冷徹皇太子の溺愛からは逃げられない
「フィラーナ様⁉」

その背中に向けてメリッサが咄嗟に声をかけたが、フィラーナは扉を大きく開けて廊下へ飛び出した。
 
 靴のヒールの高さなどもろともせず、ドレスを持ち上げながら、美しい大理石の階段を一気に駆け下りる。フィラーナはそのまま速度を緩めることなく、庭園の横の回廊の先を走り抜け、ふたりの衛兵によって守られている離宮の出口の前にたどり着いた。

「お願いです、ここを通してください!」

「え……しかし……」

 死にもの狂いで走り込んできた令嬢の懇願する叫びに、衛兵たちは当惑したように互いの顔を見合わせたが、すぐに表情を引き締め、背筋を伸ばした。

「申し訳ありませんが、許可が下りていないとここをお通しするわけにはまいりません」

「それはあとで私が謝ります! お願いします、一大事なんです!」

「申し訳ありません、まずは許可をお取りになっていただかないことには」

 衛兵たちは強固な姿勢を崩さない。彼らも城の警備規律に従わなければ、あとで罰則が待っているのだ。
 
 このままここで押し問答をしていても埒が明かないと判断したフィラーナは、踵を返すと再び駆け足で回廊へと戻り始めた。ここがだめなら、離宮と城を繋ぐあの森を突っ切るしかない。

 フィラーナが勢いよく庭園に足を踏み入れた時、誰かに腕を強く掴まれた。

 驚いて振り返ると、心配そうな表情を浮かべたメリッサがすぐ後ろに立っている。
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