冷徹皇太子の溺愛からは逃げられない
「殿下……!」
フィラーナは思わずその背中に向かって、叫んでいた。
ウォルフレッドが驚いたように振り返り、扉付近に立つ若い女中を視界に捉える。
「誰だ……?」
訝しげな視線を送っていたウォルフレッドだったが、すぐにその正体に気づき、その水色の双眸を大きく見開く。
「お前っ、フィーー」
「殿下、ご無事だったんですね⁉ 立てるくらいに回復されたんですね!」
フィラーナは嬉しさのあまり満面の笑みでウォルフレッドの元に駆け寄った。ウォルフレッドは状況が呑み込めず、説明を求めるように素早くレドリーへ視線を送ったが、ニヤニヤと意味ありげな彼の笑みで大体のことを悟り、この“有能な補佐官”を容赦なく睨み付けた。
ウォルフレッドはフィラーナの横をすり抜けると、近くのソファにわざとらしく音を立てて、尊大に座ってみせた。
「お前、この間俺にあんなことをされてまだ残っているとは、よほど神経の太い女なんだな。とっくに出て行ったと思っていたぞ。それと、俺のことでレドリーに何を吹き込まれたかは知らないが、お前がそれに応じる必要は微塵も……」
ウォルフレッドはぎょっとして、途中で言葉を切った。傍らで、フィラーナがその大きな瞳から惜しげもなくポロポロと大粒の涙を流しているのだ。言い過ぎたか、と焦ったウォルフレッドが何らかの言葉を発するより先に、口火を切ったのはレドリーだった。
「ああ、殿下がそんな突き放すような言い方をなさるから……。フィラーナ様は殿下のことが心配で、お咎めや罰を覚悟の上で、離宮をお出になり、殿下に会いに来られたのですよ?」
側近からの責めるような口ぶりに、さすがにウォルフレッドも居たたまれなくなって、急いで立ち上がる。
フィラーナは思わずその背中に向かって、叫んでいた。
ウォルフレッドが驚いたように振り返り、扉付近に立つ若い女中を視界に捉える。
「誰だ……?」
訝しげな視線を送っていたウォルフレッドだったが、すぐにその正体に気づき、その水色の双眸を大きく見開く。
「お前っ、フィーー」
「殿下、ご無事だったんですね⁉ 立てるくらいに回復されたんですね!」
フィラーナは嬉しさのあまり満面の笑みでウォルフレッドの元に駆け寄った。ウォルフレッドは状況が呑み込めず、説明を求めるように素早くレドリーへ視線を送ったが、ニヤニヤと意味ありげな彼の笑みで大体のことを悟り、この“有能な補佐官”を容赦なく睨み付けた。
ウォルフレッドはフィラーナの横をすり抜けると、近くのソファにわざとらしく音を立てて、尊大に座ってみせた。
「お前、この間俺にあんなことをされてまだ残っているとは、よほど神経の太い女なんだな。とっくに出て行ったと思っていたぞ。それと、俺のことでレドリーに何を吹き込まれたかは知らないが、お前がそれに応じる必要は微塵も……」
ウォルフレッドはぎょっとして、途中で言葉を切った。傍らで、フィラーナがその大きな瞳から惜しげもなくポロポロと大粒の涙を流しているのだ。言い過ぎたか、と焦ったウォルフレッドが何らかの言葉を発するより先に、口火を切ったのはレドリーだった。
「ああ、殿下がそんな突き放すような言い方をなさるから……。フィラーナ様は殿下のことが心配で、お咎めや罰を覚悟の上で、離宮をお出になり、殿下に会いに来られたのですよ?」
側近からの責めるような口ぶりに、さすがにウォルフレッドも居たたまれなくなって、急いで立ち上がる。