冷徹皇太子の溺愛からは逃げられない
 驚いて横を見ると、ウォルフレッドの真剣な眼差しと視線がぶつかる。

「お前……そんな恰好までして、なぜ俺の所に来た?」

「それは、殿下のことが心配で……」

「俺はお前に心配してもらえるような男じゃない。……この間のこと、お前は怒っていないのか?」

「……そっ、それはっ……」

 襲撃事件の動揺で、すっかり忘れていた『この間のこと』の記憶が甦り、一瞬にしてフィラーナの頬が熱を帯びた。しかし、それを悟られるのが恥ずかしくて、慌ててそっぽを向き、努めて冷静な口調で返す。

「びっくりしましたけど、あれは私も悪かったと思ってます。殿下のご親切を踏みにじるような言い方をしてしまいましたから……。それに、せっかく殿下のご無事な姿を見られたのに怒ったりしたら、それこそ天罰が下ってしまいます」

 膝上のスカートの布を手繰り寄せ、意味もなく握ったり離したりを繰り返すフィラーナの姿を、ウォルフレッドはしばらくじっと見つめていたが、おもむろにフィラーナに手を伸ばし、その細い肩を力強く抱き寄せた。
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