冷徹皇太子の溺愛からは逃げられない
「あなたとルイーズがここに入って行くのが見えたから、ここで待っていたのよ。ほら、私ってあなた方と違って、きれいな場所しか好まないから、これ以上は進めなかったの。ところで、ルイーズはいないの?」

「え、ええ、彼女なら少し辺りを散歩しているわ」

 フィラーナは適当に誤魔化したが、ミラベルは元からさほど興味がなかったようだ。

「あらそう。まあ、あの子のことはどうでもいいわ。フィラーナさん、あなたに聞きたいことがあるんだけど、ちょっとよろしいかしら?」

 ええ、とフィラーナが頷くと、ミラベルは納屋の方へと進んでいく。

「中で話しましょう」

納屋のドアをフィラーナが開けると、中にいたのは同い年ほどのふたりの少女だった。同じ離宮で生活を送っている候補者たちで、これまで交流がないのではっきりとは覚えていないが、名前は確かエイミーとコリーンだったと思う。

最後にミラベルも中に入ったところで、麦の穂に似た髪色のエイミーがドアを閉める。まるでミラベルの侍女みたい、とフィラーナは思ったが、余計なことは口に出さないようにした。

「フィラーナさん、あなたどういう手を使って、王太子様にお近づきになったの? 私たちにも教えてくださらない?」

「どういう手、って……何もしてないわ」

「とぼけないで。殿下と仲良くお散歩してたり、お花を送られたりしてたじゃない」

 キョトンとするフィラーナに、苛立ったミラベルが詰め寄る。その背後で、赤茶色の癖毛のコリーンが、ミラベルに賛同するように強く頷いていた。

 どうやら、三人でフィラーナを目の敵にしているようだが、あれは散歩ではなく、たまたま離宮まで送って送ってもらっていただけだ。それに、花を送られたそもそもの要因はミラベルにある。

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