冷徹皇太子の溺愛からは逃げられない
(嫌がらせをしたきたのに、どの口が言っているのよ)

 フィラーナは不快感を露わにし、ミラベルと同じ空気を吸っているのが嫌になってきた。

「ミラベルさん、私にこんなことを聞くより、ご自分の心をお磨きになった方がよっぽど時間を有意義に使えるし、淑女として正しい行いが身につくと思うわ」

「まあ、どういう意味⁉」

 フィラーナからの核心的で辛辣な発言が、ミラベルの苛立ちを怒りへと変える。だが、フィラーナは意に介せず、三人の間をすり抜けて出口に向かおうとした。

「ま、待ちなさいよ!」

 ドアノブを掴もうとするフィラーナの腕をエイミーが掴む。すると、コリーンがもう片方の腕を強く引っ張った。

 次の瞬間、フィラーナは麻袋のようなものを頭から被せられ、いきなり視界を奪われてしまった。取ろうともがいても、両腕をそれぞれ渾身の力で封じられているので、一切自由がきかない。「何するの!」とくぐもった声を出しながら、懸命に頭を前に傾けて首を振るが、ピタリと型にはまったように取れる気配がなかった。

 それに気を取られているうちに、両腕を後ろに回されたかと思うと、そのまま縄のようなもので手首をぐるぐると縛られ、足も同様の扱いを受け、床に転がされる。

「フン、生意気な女ね。あなたなんか大人しく田舎の片隅で暮らしてればいいのよ」

 ジョキッ……

 ミラベルの本性が剥き出しになり、その意地悪な声とともに、布のような何かが切られていく音がフィラーナの耳に入る。

 ジョキッ……ジョキッ……

 その不気味なハサミの音はすぐ近くから聞こえ、フィラーナは今まさに自分のドレスが切られていることを理解した。

「やめて!」と再び叫んでは身体をどうにか起こそうともがくが、自由を奪われた今、どうすることもできない。
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