冷徹皇太子の溺愛からは逃げられない
「私、ドレスが切られるところなんて、初めて見るわ」
「でも、何だか面白そうね」

 ハサミを持たないふたりの令嬢も含み笑いをしながら、ミラベルが作った切れ目から、素手でビリビリとドレスを割いていく。




「まあ、こんなところかしらね」

 どれくらい時間が経過したのか、やがてハサミの音が止み、ミラベルの満足げな声が響いた。

「早く着替えないと風邪を引いてしまうわよ。まあ、そんな恰好で出歩けるはずもないでしょうけど。でも、さすがにこのままじゃ何もできないわね。それは可哀想だから、手首の縄はほどいてあげるわ」

 その宣言通り、縄が切られた。フィラーナが床に手をついて上体を起こしている間に、ミラベル含め三人の令嬢は悠々と出口のドアへと向かっていく。

「あなたの泣き顔なんて見たくないから、私たちはもう行くわね。それじゃあ、健闘を祈ってるわ」

 ミラベルはクスッと小さな笑いを残し、あとのふたりを従えるようにして納屋を出て行った。

 フィラーナは自由になった手で、頭に被せられた麻袋を取り払い、ふう、と大きく息を吸う。まず視界に飛び込んできたのは、かつてドレスの一部であったボロボロの布の破片の数々と、それを縁取っていたレースや飾りリボンの残骸。身体に残る布はわずかで、ほぼコルセットとペチコートという下着姿の状態だ。

 いつもはドレスに隠されている豊かな胸の谷間と滑らかな肌が露わになっている。床はもともと土だらけだったので、白かったコルセットと下着も薄茶色へと変貌を遂げてしまっていた。
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