冷徹皇太子の溺愛からは逃げられない
先ほど、ルイーズと別れた地点に戻り、首を巡らせていたが、木陰に入ってしまっているのか、ふたりの姿はここからでは確認できない。さらに探し続けて進むうち、フィラーナはいつの間にか城本館の庭園近くに来てしまっていた。

 もしかしたら、ルイーズは先に戻ったのかもしれない。それならば自分も早く帰ろう、と踵をかえそうとした時、たまたま城から現れた見回りの衛兵と目が合ってしまった。

「おい、そこの女!」

 衛兵が急いで駆けてきて、フィラーナの腕を掴んだ。

「怪しいやつ、ここで何をしていた?」

「あ、いいえ、違います。私は離宮に集められている王太子殿下のお妃候補のひとりです」

「候補者? 見え透いた嘘を言うな。貴族のご令嬢が、お前のような薄汚い恰好をしているわかがないだろう」

「本当です、これには理由があって……王太子様かレドリー様に合わせていただければ、わかります」

「何、恐れ多くも殿下に拝謁したいだと⁉」

 フィラーナを元から不審者だと決めつけている衛兵に、彼女の話は通じない。すると、騒ぎを耳にした他の見回り衛兵はひとり、こちらに向かってきた。

「どうした……何だ、この女は」

「それがこの辺りをうろついていた怪しい奴で、自分を王太子殿下の候補者だとか、血迷ったことを抜かすんだ」

「ん? よく見ろ、こいつ、貴族の婦人用の靴を履いてるぞ。どこかで盗んだのか?」

「ちょっと、こっちに来い」

「な、何、待って、どこへ連れていくの⁉」

 挟まれたふたりの衛兵に腕を引っ張られ、フィラーナは城本館のどこかへと力づくで連行されていく。
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