冷徹皇太子の溺愛からは逃げられない
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　フィラーナがバートとともにやってきたのは、王都の城壁近くにある、石造りの建物だった。行き方を尋ねてきたフィラーナに『ついでだから一緒に行こう』とバートが案内してくれたのだった。

　フィラーナがここに来たのにはちゃんとした理由がある。王太子のウォルフレッドは現れないとしても、騎士のユアンがもし来ていれば会えるかもしれない。その可能性はかなり低いとは承知しているが、それに賭ける以外の方法を今は思いつかなかったのだ。

　見物は自由らしく、外の広場には多くの人々が集まっていた。それに便乗するように露店が並び、祭りのような賑わいを見せている。

　バートに手招きされ、会場内部に続く石のアーチを潜れば、目の前に大きな円形闘技場が姿を現した。参加者が競い合う舞台近くの客席は見やすさが人気で、すでに埋まりつつある。バートが何とかふたり分の空きスペースを見つけ、そこに腰かけることができた。

ここに向かう道中で、弟が今回出場する、とバートから聞いた。十八歳のバートと十五歳の弟は、ともにあの孤児院の出身で、数年前からバートは市場で、弟は鍛冶職人見習いとしてぞれぞれ住み込みで働いているのだが、弟は幼い頃から騎士になりたいという夢を捨てきれなかったのだという。

　才能があれば身分や家柄に関係なく騎士として取り立てる機会を与える、という新しい制度を布いたのも王太子なのだと、フィラーナはバートの話で初めて知った。

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