冷徹皇太子の溺愛からは逃げられない
「それより、お前、肩が痛いのか?」

 しかし、そんなフィラーナとは対照的に、ウォルフレッドが気遣うような眼差しで顔を覗き込んでくる。

「え?」

「俺の目をごまかせると思ったか? どこで痛めた?」

「それは、荷馬車から落ちて……」

「何だそれは、聞いてないぞ!」

「話の流れで、これから言うところだったんです」

 フィラーナが続きを話し始めると、ウォルフレッドの表情が徐々に硬くなっていくのがわかった。

「お前……それでよく大怪我しなかったな」

「殿下と同じですよ。悪運が強いんです」

 フィラーナは、ウォルフレッドを安心させるように笑ってみせたが、彼が強固な表情を崩す気配はない。

「……見せろ」

「え……?」

「医者には診せてないんだろう。痣ができていたらどうする。……すまない、もっと早く気づくべきだった」

「だ、大丈夫です。ほら、まだ話の途中ですし……」

「ひどい場合は、すぐに医者を呼ぶ。一刻を争う」

 真剣な眼差しの中に、心配と後悔の色が浮かんでいる。自分がそばにいれば、と彼自身、自責の念に苛まれているようだ。

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