冷徹皇太子の溺愛からは逃げられない
「そんな人が陛下に近づいて、大丈夫なの……? 陛下は、昔の毒入り事件の黒幕が誰か、ご存知ではないの?」

「確実な証拠がないのに罪には問えない。父は裁判においても曖昧さを嫌う性格だ。それに、グランは父の若い頃の治世に尽力した人物でもある。父の心の中には、まだグランへの信頼が残っているんだろう。だが、父についている近衛騎士にはグランの動きに目を光らせるよう、常々指示しているから奴が何か手を下すことは出来ない状況だ」

 それを聞いて、フィラーナの不安が少しだけ解消された。

「それに、父に死なれて困るのはグランだからな。王妃が病死すると、それまでその権威で繁栄していた彼ら一族は急激に力を失っていった。グランも例外ではなく、最後は自ら宰相を辞任したほどだ。それを友人として時々招き、グランの体裁を保っているのは父だ。だが仮に父が崩御し、俺が王位につけば奴の居場所はたちどころに消える。それどころか、俺が証拠不十分でも昔の因縁を蒸し返し、独断で極刑を下すかもしれないと恐れているかもな」

 つまり、死刑。だから、あんなにご機嫌を取るような言葉を並べ立てていたのか、とフィラーナは納得した。しかし道を譲らない態度は、こんな若造になめられてたまるか、というグランのプライドが滲み出ていた結果なのかもしれない。

「だから、俺が王太子でいることは奴にとって極めて都合が悪い。だが、テレンスが王太子になればその不安から解放され、過去の栄光を再び手にすることも出来る」
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