冷徹皇太子の溺愛からは逃げられない
「えっ……⁉」

 グランの言葉に、フィラーナは驚愕して顔をひきつらせた。

(今、なんて……?)

「やはり小娘の考えは浅いな。残念ながらテレンスは我が血縁者でありながら、到底統治者には向いていない。嘆かわしいが、姪である亡き王妃が甘やかせすぎたのが原因で少々問題のある人間になってしまった。しかし、さっきも言った通り、私はこの国の元重鎮として、国の平和を願っている。この国を愛しているからこそ、相応しい人材に王になってもらわねば。……そう、まだ真っ新な状態の、セオドール殿下に」

「……っ!」

 真っ新な状態、という表現に、グランの野望を感じ取ったフィラーナの顔が青ざめる。グランはセオドールが王位に就いた暁には、それに尽力した功臣としてその後見となり、彼を“傀儡の王”にするつもりでいるのだ。

「あなた……血の繋がったテレンス王子を見限るというの……?」

「ルイーズ嬢とセオドール殿下の関係に気づき、教えてくれたのはテレンスだ。それは評価してやってもいい。おかげで、ルイーズ嬢を引き込みやすくなった。彼女にセオドール殿下を説得してもらい、王太子失脚の陣頭を取ってもらうつもりだ」

 フィラーナは佇むルイーズに視線を移したが、彼女はじっと俯いたまま何も言わない。

(ルイーズ……否定しないのね……)

 その様子に失意を感じながらも、フィラーナはすべてにおいて合点がいった。セオドールとの仲を知ったグランが城に出入りするルイーズにいつの間にか接触し、話を持ち掛けたのだ。セオドールと一生添い遂げることができて尚且つ王妃にもなれるというグランの言葉は、いずれセオドールは釣り合いの取れる貴族の娘と結婚してしまうだろうと不安を感じていたルイーズの心に、さぞ甘美な夢を抱かせたことだろう。

 それを見逃さなかったグランは、言葉巧みにルイーズに揺さぶりをかけ、自分側に引き込んだのだ。
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