冷徹皇太子の溺愛からは逃げられない
「えっ、そうなのですか……失礼しました。殿下とフィラーナどの、とても似合いだと思ったものですから」
「そんな、私などでは恐れ多くて、王太子様と釣り合いませんよ。……あ、そちらにも落ちていますね、あそこにも。お手伝いします」
少しだけ肩を落としたセオドールを気遣うように声をかけ、フィラーナは草を分けて紙を拾って回った。
手分けして全部回収し終えた時、フィラーナはいつの間にか城側の森の端まで来ていることに気づいた。木々の隙間から、向こう側に広がる大きな庭園が見える。もう戻ることを告げ、深くお辞儀をして踵を返そうとしたが、セオドールに引き留められた。
「ありがとうございました。でも、このまま城を通った方が足元も汚れませんよ。僕が途中までお送りします」
「ありがたいお言葉ですが、私たちは基本、離宮から出てはいけないことになっておりますので」
「では、せめて護衛を呼んできます」
「大丈夫です。来た道を戻るだけですから」
セオドールの優しい気持ちにフィラーナは心から感謝しつつ、再びお辞儀をしてその場を離れた。程なくセオドールの足音も遠ざかっていく。だが、数秒も経過していないところで、背後から少年の声が聞こえたような気がした。
フィラーナが何気なく振り向くと、城入り口と思われる場所で、セオドールが誰かと会っているようだった。だが、何かただならぬ雰囲気を感じ、フィラーナは庭の境まで戻ると木の陰に隠れて頭だけを覗かせ、様子をうかがう。
セオドールの前に立つのは、白地全体に金の刺繍が施された、派手な上衣を着た栗色の髪の若い男だった。その男は何か発言したあと、セオドールの手からデッサン画の紙を乱暴に取り上げると、まるで『取ってみろ』という風に紙をヒラヒラさせながら、手を頭上に伸ばす。
まだ少年の背丈ほどしかないセオドールは、高い位置に持っていかれた紙を取ることができない。
「そんな、私などでは恐れ多くて、王太子様と釣り合いませんよ。……あ、そちらにも落ちていますね、あそこにも。お手伝いします」
少しだけ肩を落としたセオドールを気遣うように声をかけ、フィラーナは草を分けて紙を拾って回った。
手分けして全部回収し終えた時、フィラーナはいつの間にか城側の森の端まで来ていることに気づいた。木々の隙間から、向こう側に広がる大きな庭園が見える。もう戻ることを告げ、深くお辞儀をして踵を返そうとしたが、セオドールに引き留められた。
「ありがとうございました。でも、このまま城を通った方が足元も汚れませんよ。僕が途中までお送りします」
「ありがたいお言葉ですが、私たちは基本、離宮から出てはいけないことになっておりますので」
「では、せめて護衛を呼んできます」
「大丈夫です。来た道を戻るだけですから」
セオドールの優しい気持ちにフィラーナは心から感謝しつつ、再びお辞儀をしてその場を離れた。程なくセオドールの足音も遠ざかっていく。だが、数秒も経過していないところで、背後から少年の声が聞こえたような気がした。
フィラーナが何気なく振り向くと、城入り口と思われる場所で、セオドールが誰かと会っているようだった。だが、何かただならぬ雰囲気を感じ、フィラーナは庭の境まで戻ると木の陰に隠れて頭だけを覗かせ、様子をうかがう。
セオドールの前に立つのは、白地全体に金の刺繍が施された、派手な上衣を着た栗色の髪の若い男だった。その男は何か発言したあと、セオドールの手からデッサン画の紙を乱暴に取り上げると、まるで『取ってみろ』という風に紙をヒラヒラさせながら、手を頭上に伸ばす。
まだ少年の背丈ほどしかないセオドールは、高い位置に持っていかれた紙を取ることができない。