冷徹皇太子の溺愛からは逃げられない
(誰?どうしてあんなことするの?)
男は困っているセオドールを見て楽しんでいるようにも見える。フィラーナは今にも飛び出して紙を奪還したい自分を抑えながら、男を凝視した。歳は二十代半ばほどで、背もそこそこ高い。王族であるセオドールに、そんな真似が出来るのは、同等かそれ以上の立場の人間だ。
(きっと、彼がテレンス王子ね……。彼にとってもセオドール王子は甥のはずなのに、なぜあんな意地悪なことが出来るの?)
かといって、出て行ってその行いを咎めることなど出来ないし、このままこの場を立ち去るのも後ろ髪を引かれる思いだ。さまざまな感情がフィラーナの心を交錯していたその時、テレンスがわざとらしくゆっくりと紙を引き裂き始めた。
(え……?)
素敵だと、絵を褒めた時の嬉しそうなセオドールの顔が、フィラーナの頭に浮かぶ。
「待ってください!」
フィラーナの口が勝手に動き、気づけば身体が木陰から飛び出していた。
「フィラーナどの……」
「誰だ、お前は?」
突然現れた人影に、ふたりの動きが止まり視線が集まる。フィラーナは駆け寄ると小さくジャンプし、テレンスの手から素早く紙を抜き取った。確認のため、すぐに視線を紙に走らせると、端の方が少し破かれただけだとわかり、フィラーナはホッと息をつく。
「なんだ、お前は。宮廷仕えの者ではなさそうだが。私を王族だと知っての狼藉か」
何も言わず紙をセオドールに返したフィラーナの一連の行動に、明らかに不機嫌そうなテレンスの声が降りかかる。フィラーナは少し後退すると、膝を折って頭を下げた。
「突然のご無礼をお許しください。私は、王太子殿下の妃候補として参った者でございます。王宮の勝手がわからず、庭に迷い込んでしまいました」
男は困っているセオドールを見て楽しんでいるようにも見える。フィラーナは今にも飛び出して紙を奪還したい自分を抑えながら、男を凝視した。歳は二十代半ばほどで、背もそこそこ高い。王族であるセオドールに、そんな真似が出来るのは、同等かそれ以上の立場の人間だ。
(きっと、彼がテレンス王子ね……。彼にとってもセオドール王子は甥のはずなのに、なぜあんな意地悪なことが出来るの?)
かといって、出て行ってその行いを咎めることなど出来ないし、このままこの場を立ち去るのも後ろ髪を引かれる思いだ。さまざまな感情がフィラーナの心を交錯していたその時、テレンスがわざとらしくゆっくりと紙を引き裂き始めた。
(え……?)
素敵だと、絵を褒めた時の嬉しそうなセオドールの顔が、フィラーナの頭に浮かぶ。
「待ってください!」
フィラーナの口が勝手に動き、気づけば身体が木陰から飛び出していた。
「フィラーナどの……」
「誰だ、お前は?」
突然現れた人影に、ふたりの動きが止まり視線が集まる。フィラーナは駆け寄ると小さくジャンプし、テレンスの手から素早く紙を抜き取った。確認のため、すぐに視線を紙に走らせると、端の方が少し破かれただけだとわかり、フィラーナはホッと息をつく。
「なんだ、お前は。宮廷仕えの者ではなさそうだが。私を王族だと知っての狼藉か」
何も言わず紙をセオドールに返したフィラーナの一連の行動に、明らかに不機嫌そうなテレンスの声が降りかかる。フィラーナは少し後退すると、膝を折って頭を下げた。
「突然のご無礼をお許しください。私は、王太子殿下の妃候補として参った者でございます。王宮の勝手がわからず、庭に迷い込んでしまいました」