冷徹皇太子の溺愛からは逃げられない
「へぇ……そういうことか。珍しく本気とは」

 テレンスは驚いたように片方の眉を上げたが、すぐさま面白がるように笑った。

「だから、違いまーー」
「テレンス、女漁りも大概にしろ。これ以上の醜聞は、いずれ己の身を滅ぼすことになるぞ」

 否定しようとしたフィラーナの発言は、ほぼ同時に発せられたウォルフレッドの声にかき消された。

 すると、瞬時にテレンスの目尻が怒りで吊り上がる。

「偉そうに私に指図するな。この簒奪者め……!」

 突然剥き出された敵意がウォルフレッドに向かって放たれ、フィラーナの背筋に悪寒が走った。咄嗟にウォルフレッドを見上げたが、彼の表情は少しも変わらず、感情が読めない。

「私の母は正妃だったんだぞ!本来なら、お前が手にしている地位は、私の物だったはずだ!」

「確かに、母親の位からすればお前の方が王位継承順位は上だった。だが、父上はお前を選ばなかった。それがなぜなのか、言葉で説明しなければ分からないほど、お前も馬鹿ではないだろう」

「うるさい、黙れ……!」

 核心を突かれたテレンスは返す言葉もなく、ギリッと唇を噛み、ウォルフレッドを鋭く睨みつける。

「戦利品の女から生まれ出た分際で……!」

 そして、吐き捨てるように呟くと、大股で立ち去っていった。

(戦利品……?)

 フィラーナはテレンスの最後の言葉が気になったが、それよりもまず、今の状況を何とかしたい。

「王太子殿下……そろそろ離していただけませんか」

「……ああ」

 一瞬、間があったのち、ウォルフレッドはフィラーナをようやく解放した。
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