冷徹皇太子の溺愛からは逃げられない
 初めての経験にフィラーナの身体から徐々に力が抜け、それに伴って拘束されている手首が次第に解放されていった。ウォルフレッドの手はいつの間にかフィラーナの後頭部と背中に回されている。

(い、いきなり何するの……⁉)

 だらりと両腕が下がった重みで自我を取り戻したフィラーナは、自由になった手でドンと突き飛ばすようにウォルフレッドの胸を強く押した。

 離れた相手の男の唇が濡れているのを見て、フィラーナは羞恥で顔が火を噴きそうなほど熱くなるのを感じた。なぜこんなことをしたのか問いただすことも視線を合わせることもできないまま、手で口を押えてその場に崩れ落ちる。

 ウォルフレッドも衝動的に起こしてしまった行動を自覚したのか、気まずそうに視線を宙にさまよわせたあと、うずくまるフィラーナを見つめた。そしてすぐに手を差し伸べようとしたが途中でグッと強く拳を握りしめ、声をかけることなくそのまま引っ込める。

「護衛が嫌なら、この部屋から一歩も出ないことだ」

 静かにそう告げると、ウォルフレッドは踵を返し部屋を出て行った。
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