冷徹皇太子の溺愛からは逃げられない
 そんなフィラーナを落ち着かせるように、レドリーは穏やかな微笑みを向けた。

「珍しく目も当てられないほど落ち込んでいらっしゃったので心配になり、私が無理に聞き出しました。もちろん本人は言いたくなかったでしょうが……。とても反省なさっているご様子でした。ですが今すぐには合わせる顔がないのだと思います。なにしろ偏屈なお方なので」

 とても臣下とは思えない軽口とも取れる表現に驚きを感じながらも何だか可笑しくなって、フィラーナの心は少しずつ落ち着き始めた。もしかしたらウォルフレッドとふたりの時は主従関係の枠が若干外れるのかもしれない。

「とにかく、殿下がお妃候補の方にこれほどまでに関心を持たれたのは初めてのことなのです」

「お話がよくわかりません。帰らせようとするのが関心……なのですか? 私のことが気に入らないから遠ざけたいのでは……?」

「遠ざけたい、というのは当たっているかもしれません。ですが理由が違います。殿下はあなたのことが心配でたまらなく護衛をつけようとお考えになりました。今は些細なことですがそれがいつ大きな危険に発展するかわかりません。人の欲が具現化する王宮という場所の恐ろしさを、あの方は身をもってご存知ですので」

 ということは、ウォルフレッドは命の危機を感じるような目に遇ったということなのだろうか。例えば、彼と対立する勢力からーー

「それは……殿下のお母上が側妃様だからですか?」

 フィラーナはふと思ったことを口にしたが、すぐ失言に気づくと視線を下に落とした。

「申し訳ありません。出過ぎたことを……」

「いいえ、この話を始めたのは私ですから」

 レドリーは柔和な表情を変えず穏やかな口調で続ける。
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