冷徹皇太子の溺愛からは逃げられない
「それは……」
 
 レドリーは少しだけうつむきかけたが、すぐに顔を上げた。

「申し訳ありませんが、私の口からお答えするわけにはまいりません。ですが実のところ、私も殿下のお考えをすべて把握しているわけでもないのです」

「そうですか……」

 やはりそう簡単には教えてくれそうもない。ならばこちらからもうひと押ししてみよう、とフィラーナは思った。

「私は殿下のお母上のことが関係しているのではないかと思っているのですが、違うのでしょうか?」

 かなり踏み込んだ上に失礼なのは百も承知で、フィラーナは強気に出た。曖昧な状況下にも関わらずこれからもウォルフレッドのそばにいてほしいと相手が要求するのなら、対価としてこちらとしても知りたいことを教えてもらいたい。

 レドリーは真顔でじっとフィラーナの瞳を見据えていたが、やがて何かを感じ取ったように口の端を持ち上げた。

「なるほど……交渉というわけですね。なかなか気概のあるご令嬢だ。殿下がお認めになるはずです。……いいでしょう、質問だけならば正直にお答えします。残念ながらそれはハズレです」

「えっ……」

 かなり自信があっただけにフィラーナは拍子抜けしてしまいポカンと口を開けた。それを見て、レドリーが穏やかに微笑む。

「今はそれだけしかお答えできませんが。しかし、なぜそうお思いになったのです?」
< 90 / 211 >

この作品をシェア

pagetop