【2025.番外編&全編再掲載】甘い罠に溺れたら
まだ、自分の部屋にこの人がいることが、不思議で少し前なら想像もしていなかった。
「羽田!ピザでもとる?」
昔同様にそう声をかけながら、部長はスマホの画面を私に見せた。
「ピザ……」
「嫌?じゃあ宅配だと……」
「あの……。私作ってもいいですか?」
ただでさえ見ている限りまともな物を食べている様子もないのに、またピザとかジャンクフードというのはさすがに避けた方がいいような気がした。
「え?」
私の言葉の意味が解らなかったのか、一瞬不思議そうな顔をした後、部長は嬉しそうに微笑んで「もちろん」と答えた。
あの頃のひどい料理を知っていながら、もちろんと言ってくれた部長にホッとして、私は部長の前にお茶を置いた。
「少しだけ待っててください」
「ありがとう」
そう言って、部長は上着を脱いでネクタイを緩めるとソファに体を埋めた。