【2025.番外編&全編再掲載】甘い罠に溺れたら

「ちょっと!早く入ってきてください……!なんででてきたの?」
そう言うと、部長はリビングに歩いていき、何やら紙袋を持ってきた。

「忘れてた。これ、冷やしといて」
オレンジ色のおしゃれな紙袋は、最近噂になっているレアチーズケーキの店の物だった。

「お前、チーズケーキ好きだろ?」
昔から私はチーズケーキに目がない。ここのケーキも食べてみたかったところだった。

「うそ!嬉しい。食べたかったの。ありがとうございます」
中を覗き込んでウキウキしながら言った私に、部長も嬉しそうに微笑んだ。

「お前が喜んでくれるのが俺も嬉しい」
そう言って私の頬を撫でて、部長はバスルームへと戻って行った。

甘さに加えて、今度は餌付けみたいじゃない……。
そんなつぶやきはもちろん部長には聞こえなかったと思うけど、私は熱くなった頬を手でパタパタ仰ぐと、ケーキを冷蔵庫にしまった。


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