【2025.番外編&全編再掲載】甘い罠に溺れたら
あ、着替えって……。

そう思った時には、部長は上下スェット姿で、タオルを肩に巻いてバスルームから出てきた。
その姿を私は啞然として見つめた。

「ばれた?」
悪びれもなく言われて、私はまたもや最初から部長の中で計画していたことだと分かり、小さくため息をついた。

「また計画済みですか?これはなぜ?」

「いや、俺のうちよりここからの方が通勤の便もいいだろ?」
もっともなことを言ったが、今日は金曜日だ。
明日は仕事に行く必要などない。

ジロリと睨みつけた私に、部長は観念したように私の方に歩み寄る。

「なあ、お願い。俺はソファで寝るから。いつも酒も飲めないし、ゆっくりできないし。この部屋が落ち着くんだよ。俺の仕事の効率を上げると思って。頼む」

もう今更この格好をしたこの人に、何かを言う気もなくなり私は小さくため息をついた。
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