【2025.番外編&全編再掲載】甘い罠に溺れたら
『ありがとう、あと20分ぐらいで行くから』
「わかった。優悟君ごはんは食べたの?」
平静を装って聞いた私の言葉に、優悟君は少し考えたような間があいた。
『そう言えば、朝から何も食べてないけど、そんなに食欲はないからいいよ』
「そっか……」
疲れ切った声に、電話を切ると簡単に五目雑炊を作り、まだかまだかと優悟君を待った。
しばらくして鳴ったインターホンに、私は扉を開けて出来る限り笑顔を向けたつもりだったが、きちんと笑顔を向けられたかは自信がない。
「おかえりなさい」
そんな私を見て、疲労の色が濃く見える優悟君は少しだけ表情を緩めると、「ただいま」そういって靴を脱いだ。
「疲れてるみたいだけど、お風呂入る?」
私の言葉に優悟君はソファに座ると、首を振った。
いつもならすぐに脱ぐジャケットもそのままな優悟君に、私は胸騒ぎがして無理やり明るくふるまう。
「ご飯は?簡単だけど雑炊作ってみたけど……」」
「沙耶」
言葉を遮り、呼ばれた私はビクッとして言葉を止めた。
「はい……」
「こっち来て」
ポンと自分のソファの横を叩くと、私を見た。
小さく息を吐いて、ゆっくりと座ると私は不安から俯いた。