【2025.番外編&全編再掲載】甘い罠に溺れたら

音もなく静かに走る高級車で連れてこられた場所に、私はぽかんとしていたと思う。
玄関らしきところから入り、家の前まで車で何分かかったのだろう?
東京という事が信じられないほどの、緑に囲まれたお屋敷を呆然と見ていた。

「どうぞ」
うやうやしく開けられたドアに、慌てて私は車から降りた。

こんなところで育って、よくあれだけ庶民的な生活が板についていたものだと、変なところで感心していた私は、開いた重厚な扉に慌てて足を踏み出した。

中に入ると、お手伝いさんというのか、家政婦さんなのか、庶民の私にはわからない女の人に案内されて、奥の部屋へと案内される。
ドクンドクンと心臓が煩い。
何を言われるのかも、想像がつかない。

「奥様、おつれしました」
その言葉に、私はごくりと唾液を飲み込んだ。

「入ってください」
思ったより静かなきれいな声に、私は少しだけホッとした。

「失礼します」
そう言って私は頭を下げた後、窓際に立っていた女性が目に入る。

細身で長い髪はきれいにアップされた50代にも見えないきれいな人だった。
でも、優悟君の年齢から考えて、もう少し本当は年上なのだろう。
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