【2025.番外編&全編再掲載】甘い罠に溺れたら
「正式にはまだだけど……」
「どんな人なの?年は?職業は?」
矢継ぎ早に質問され、私は少し声を大きくお母さんに問いかけた。
「どうしたの?結婚してほしいから大ちゃんとの話を持ってきたんでしょ?どうしてそんな風に聞くの?大ちゃんがいいの?」
私の言葉に、お母さんは少し怒ったような表情をした。
「そんなわけないでしょ。大知くんがいいんじゃなくて、大知くんなら幸せになれるんじゃないかと思ったの」
「私のお付き合いしている人も……」
「ねえ、沙耶、昔の事を忘れたの?ぼろぼろに傷ついて、もう恋をしないって言ってたのは沙耶よ。心配しないわけないじゃない」
そうだ、あの時傷ついて、泣きながら実家に帰ったっけ……。
「いや、だからいろいろあってもう大丈夫になったから」
そう言った私の言葉に、お母さんはさらに険しい表情をした。