【2025.番外編&全編再掲載】甘い罠に溺れたら


「おい、みんなどうしたんだ?」
その言葉と一緒に、大人げないが、まったく見たくない水田が顔をあらわした。

「ああ……」
一瞬で水田も理解したようで、小さくため息をついて俺を見た。

「部長、あっ、常務でしたね。お疲れ様です」
にこやかな笑顔で頭を下げ、余裕を見せる水谷に苛立ちが募る。

「すまない、沙耶はもうつれてかえっても?」
冷静を装い言葉をかけた俺に、水田はもちろんそこにいた全員が勢いよく頷いた。

「あの……常務。私が沙耶ちゃんに頼んだんです。水田先輩を呼んでほしいって」
申し訳なさそうに言った近藤さんに、俺は笑顔を向けた。

もちろん、水田が沙耶を好きだったことなんてこの子は知らないのだろう、そしてその事をなぜかばらしてはいけないという事は、俺にも分かった。
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