【2025.番外編&全編再掲載】甘い罠に溺れたら

***

「疲れてない? 大丈夫?」

車に乗り込み、高速道路を走行していた俺に、沙耶が少し心配そうにする。

「大丈夫だよ。本当に沙耶は心配性だな」

少し苦笑しつつ答えれば、沙耶はじっと運転する俺の横顔を見つめる。

「だって、ここのところずっと出張続きだったし、休みらしい休みは久しぶりじゃない? それなのに旅行なんて……」

心配してくれているのがわかるが、少しだけ沙耶の気持ちを聞きたくて、
意地悪な言葉を言ってみる。

「沙耶は行きたくないんだ?」

「そんなわけない!」

最後まで言い終わらないうちに言葉を重ねた沙耶に、
俺は空いていた左手でそっと彼女の髪に触れた。


「じゃあ、沙耶は楽しんで」

俺のセリフに、沙耶はふっと息を吐くと、満面の笑みを浮かべてくれた。
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