【2025.番外編&全編再掲載】甘い罠に溺れたら
ちょうどチェックインのお客様だろう、何人かいた人が一斉に二人を見る。
雑誌の撮影のようなその光景に、私も見惚れていた。
身長は180cm以上あるように見える。
髪色は濃いブラウンで、サングラスをかけていたため、一見して外国人とはわからなかったが、瞳を見るとブルーが混じったような綺麗な瞳だった。
「沙耶」
二人でなにやら会話をしていたが、優悟君の呼ぶ声に私はハッとして足を踏み出した。
「アラン、こちら羽田沙耶さん。沙耶、彼はうちの会社のホテル事業の責任者の……」
「栗田アラン聖、よろしく」
優悟君の紹介を遮り、彼はそっと私の手を取り、手の甲にキスをした。
「アラン!」
怒ったような優悟君の声に、アランさんはクスッと笑い声を上げた。
「優悟のそんな顔が見られるなんてな」
珍しいものでも見るようなアランさんに、私はポカンとしてしまう。
「沙耶は婚約者だ」
低く、少し怒りを込めたように言った優悟君だったが、アランさんはそれを軽くあしらうように私をじっと見つめる。
「沙耶、優悟とはどこで会ったの? 婚約者ってことは、まだ籍は入ってないってことだよね?」
軽い印象を持ちそうだが、その瞳は私を探るような視線で、私は少し戸惑ってしまう。
「アラン、やめろ! 沙耶は違う」
その言葉に引っかかりを覚えて優悟君を見上げたところで、カツカツとヒールの音がする。